慢性腰痛・脊柱管狭窄症・パーキンソン症を「鍼」で治療。鍼を体に打つことでどんな効果があるのかご存じでしたか?
「鍼灸治療」と聞くと、「やったことない」「怖い」「痛そう」「熱そう」という声も挙がりますが、同じくらい「大好き!」という方もいらっしゃいます。
鍼や灸でどんな効果が生まれるのか、ご存じですか?
若くして鍼灸院を開業した「くにさだ鍼灸整骨院」の飯島隆行先生に、鍼灸の作用について解説していただきました。
くにさだ鍼灸整骨院についての詳細はこちらをご覧ください。
当院は、慢性腰痛や膝の痛みといった症状の患者様が多くいらっしゃいます。
当院で提供する施術は「鍼灸」で、いわゆる整体やほねつぎはほぼ行わないという点でちょっと珍しいかもしれませんが、世の中には鍼治療が大好きな人が一定数いまして、長く通ってくださっています。
もちろん、鍼灸をやったことがないという方も大歓迎です。
この記事では皆様に、鍼灸の効果と、なぜ腰痛に効くのかについて解説したいと思います。
鍼を敵だと見なした筋肉が血流を集中させる
鍼治療の一番の強みは、手技では届かない深層部の筋肉に届く点です。
非常に細い、髪の毛より細い鍼を体に刺すので痛みは感じません。鍼が深層部の筋肉に到達すると、周囲の筋肉が鍼を敵だと認識します。敵から体を守らなければなりませんので、血流を集中させて鍼を攻撃し始めます。
痛みがある患部の深層部の筋肉を、私はよく乾いたスポンジにたとえて患者様にご説明しています。
スポンジは濡れていると柔らかくしなやかですが、カラカラに乾くとカチッと固まりますよね。濡れているときより弾力が強く、押してもすぐに形が戻ってしまう。
患部の筋肉は乾いたスポンジのようにカチカチなので、水を含ませて柔らかくさせてあげなければなりません。
筋肉が鍼を敵だと思って、戦いのために血流を集中させるとき、その血流が、スポンジで言うところの水になります。
つまり、血流が集中して筋肉が柔らかくなるのです。
これが鍼の作用です。
本来、筋肉は充分な血流があってしなやかに動くものです。鍼治療によって本来の状態に戻すことで、痛みや疲労感が軽減するだけでなく、体が持っている「治す力」を引き出すことができるようになります。
治す力が高まることで、鍼を抜いた後でも回復機能が引き続き作用し、「何をしても腰が痛かった」という状態から「きちんと休めば回復できるようになった」という状態へと変わっていきます。
また、痛みを感じにくくするホルモンが分泌されて、「さっきまでの痛みが軽減した」という即効性が感じられることもあります。もちろん個人差はあります。
局所治療と全身治療の2種類を用意する理由
当院の治療は、局所的な治療と全身治療の2種類があります。
まず患者様から、いつからどこが、どのように痛いのかなど、当院に来院するに至った経緯をお聞きします。
その際に大事なのは、腰に負担がかかって腰が痛くなってしまったのか、それとも他の箇所に不調があるために腰に痛みが生じたのかを見極めることです。
ギックリ腰一つとっても、例えば股関節の動きが悪いために腰に負担をかける動作をしてしまっていたのなら、股関節にアプローチしなければなりません。
膝痛も同様で、足首が悪いために膝が痛くなる、といったことは頻繁に起きることです。
このように痛みの状態を、ヒアリングと検査で明らかにして、局所的な鍼治療にするか、全身にアプローチするかを決めていきます。
当院に限らずどこの院に行っても言えることですが、特に初回の施術時は、ご自身で「腰だけやってもらえればいい」と判断するのではなく、問診の結果により全身へのアプローチが必要だと判断されることも考慮しておいた方がいいでしょう。
鍼治療は、受けた後の過ごし方が大事
初めて鍼治療を受ける方にとっては、局所でも全身でも恐怖心を持ってしまうかもしれません。
やはり、施術はリラックスして、かつ納得した上で受けていただくことが重要だと考えていますので、当院では、初めは軽く鍼を打って痛みを感じないことを実感していただく時間を設けています。
施術時間は、まず鍼を打ち、その状態で20分程安静にしていただき、鍼を除いて終了ですので、初回の問診を除けば30分前後です。
即効性を感じられるか、鍼を打っている最中に体が熱くなるなどの反応があるかどうかは、実に人それぞれです。年齢によっても異なるように思います。
ただ、整体・ほねつぎは体が動かされて関節や筋肉にアプローチしますので、気持ちよさと言いますか、「治った感覚」みたいなものが得やすい面がありますが、鍼治療は体の治癒力を引き出すものなので、その場で症状が良くなったという感覚が得られるかどうかは特に重要視しません。
施術を受けた後の注意点をしっかりと守っていただき、鍼治療の効果を最大限に引き出して体の治癒力を維持する工夫を患者様ご自身がしていかなければなりません。
施術後の大原則は「副交感神経が優位になるよう心がける」です。
たとえ痛みが収まったとしても、直後に筋トレをしたり、激しい運動をしたりしては、せっかく患部の筋肉に集中していた血流が、筋肉の発達のために使われてしまいます。
これでは効果半減ですので、運動は控えてゆっくり過ごすことが大切です。
また、飲酒も控えていただくようお願いしています。お酒について、飲むと眠くなることから副交感神経が優位になる効果があると思っている方がいますが、確かに飲んでしばらくしたら眠くはなるものの、2~3時間すると、逆に交感神経が優位になってきます。
お酒を飲んで寝たら夜中に起きてしまった、という経験はありませんか?それは交感神経が優位になっている証拠です。
カフェインを摂るのも控えた方が無難です。コーヒーや紅茶、緑茶などですね。
当日中に入浴することは問題ありませんが、お風呂のお湯はぬるめにしましょう。熱いお湯だと交感神経が優位になってしまいます。
ゆっくりと浸かってリラックスすることで、鍼治療の効果が維持されます。
要するに、筋肉や精神に刺激を与えるようなことを控えて、のんびりゆったりと過ごすことが重要だということですね。
お灸の種類と特徴について
次に、お灸についてご説明します。
当院では鍼治療を行った後、お灸も必要かどうかをこちらで判断していますので、鍼治療だけで終わる方もいれば、お灸までやる方もいます。
一般的に、お灸にはいくつか種類があり、「せんねん灸」で知られる間接灸や、鍼の先端にお灸を載せる灸頭鍼などがありますが、当院ではもぐさが直接肌に触れ、もぐさの成分が浸透する直接灸を用いています。
直接灸は、もぐさをこねて米粒大にし、線香で火をつけて肌に載せ、燃え切る直前で取り除く方法です。
燃えるもぐさが皮膚に落ちるなどのリスクがなく、もぐさの成分が浸透して高い効果が得られるため、この方法を採用しています。
あと、ここだけの話ですがコスパがいいというのもあります(笑)
米粒大のもぐさが9割5分程燃えたら取り除くのですが、火傷させずにもぐさの成分であるチネオールを皮膚に浸透させる、このタイミングの見極めも灸師が持つ高い技術の一つだと言えるでしょう。
熱いのが苦手な方や、お灸が初めてで恐怖心がある方には8割くらいで取り除くこともあります。その場合は、最後のチクンとする刺激もほとんどありません。
火傷しそうで怖い・・というお声は時々聞きますが、直接灸で火傷をすることはありませんのでご安心ください。
当院は鍼治療と並行してお灸を行っていますが、お灸が必要となる場面は、鍼を打つと痛みを感じやすい部位をケアしたいときです。
指先や手の甲、かかと、足の裏など、筋肉や脂肪が薄く、骨が皮膚に近い部位ではお灸が活躍します。
また骨と筋肉の間の腱にアプローチしたいときもお灸の出番です。
お灸の効果とは?長い目で見ると医療費削減につながる!
お灸の効果は鍼と同様、患部を刺激して血流が促されることですが、加えて「ヒートショックプロテイン」が高まることがわかっています。
ヒートショックプロテインとは、熱によって傷つけられた体が、細胞を修復するためにたんぱく質を生み出します。
これが生み出されることにより、疲労や筋肉痛、コリの軽減、老化の予防などが期待され、特に免疫活性の効果はガン予防や生活習慣病の予防にもなるため、近年大変注目されています。
鍼治療とともに長期間継続していくことで、慢性腰痛やコリといった目の前の症状の緩和だけでなく、様々な疾患にかかりにくい健康的で強い体づくりにつながっていくのです。
長い目で見れば医療費の削減にもつながるのではないかと、私は考えています。
お試しでお灸の効果をやってみるならば、詳しい知識や技術はなくても大丈夫です。
市販されているテープ付きのお灸を、痛いところ、こっているところにやってみてください。それで充分だと思います。体のツボの図解書が同封されていても無視して大丈夫です。
週に1~2回でもやってみて、我流でやってきたけど何だか調子がいいかもな、と感じることができたらラッキーですね。
また、鍼灸院でお灸をしてもらった後、次の来院までの間にも自分でお灸をしてもいいと思います。お灸の効果が持続して、体調の変化も感じやすくなるのではないでしょうか。
お灸は鍼治療ほどには浸透していないイメージがありますが、鍼治療と違って自宅ですぐにできるのがよいところです。ぜひ試してみてください。
お灸をしたあとの過ごし方の注意事項は、鍼治療と同じです。
体の免疫が活性化し、自然治癒力が高まろうとしていますので、スポーツや飲酒、熱いお風呂などで交感神経を刺激しないようにしましょう。
リラックスして休養をたっぷりとることが大切です。
サプリや薬に頼らず体本来の機能でいい状態を維持したい人にお勧め
お伝えしてきたように、鍼灸治療は体が本来持っている治癒力を引き出す効果のある治療です。
当院にいらっしゃる患者様の多くは体の痛みをきっかけに来院されていますが、その後も体を元気な状態で維持していくために、週に1回通っている方が多くいます。
サプリや薬に頼らずにいい状態をキープしたいという方にはお勧めです。
ただやはり、経験のない方にとって「鍼を打つ」「お灸をする」という行為は勇気がいるかもしれません。自分に合うかどうかを試してみるというつもりで、1回だけ受けてみるというのもいいと思います。
対応する症状としては、ギックリ腰、脊柱管狭窄症、慢性腰痛をはじめ、様々な症状が挙げられます。
個人的には、神経痛やパーキンソン症とは相性がいいと感じています。
手が震えている状態でも鍼を打つことは可能です。「この状態では難しいのでは」と自己判断せず、一度ご相談いただければと思います。
私自身、MRIには写らない体の異状を鍼灸治療で改善してもらったことをきっかけに、この仕事に興味を持つようになりました。
感覚麻痺、耳が聞こえにくい、疲れやすい、といった症状もどうぞご相談ください。
鍼灸治療について解説してくださった飯島隆行先生が院長を務める「くにさだ鍼灸整骨院」の詳細はこちらをご覧ください。